高円寺に住んでいた頃、住む前から気になって
いたお店がありました。
今はもう店じまいされてないのですが、キッチン
スターという小さなカウンター席のみの洋食屋さん
がありました。
勿論店先にはメニューサンプルがしっかりと飾られて
いました。
”昭和”という言葉が正に合う様な、年季の入ったお店、
お客様は地元に住む方、お一人様サラリーマンが殆ど
だったように思います。
少なくとも20才そこそこの若者が入る様なお店ではな
かったように思います。
高円寺商店街を七つ森に向かってメインストリートを歩い
ていくと坂の途中左側にあった小さな小さなお店です。
通る度にとても良い香りがしてきて、いつかここでご飯を
食べたいという思いは住み始めてすぐに行動へ移しました。
マスターはおじちゃん♡、当時60才位でしょうか。
住み始めて、週に一度はキッチンスターで食べていたと思う。
若い人が通うようなお店じゃないだろうに、とよく言ってい
ましたが、私にとってはとても居心地の良いお店でした。
毎回ニコニコしながらおじちゃんに話しかけると、とて
も恥ずかしそうにいつも答えてくれました。
奥様にもお会いしたことがありますが、奥様にもよくして
頂きました。
目の前でおじちゃんがテキパキと調理してくれる、私はいつも
同じメニューばかり頼んでいましたが、私の友人は懐かしい
ナポリタンやデラックスを頼んでいました。
小さな小さなお店なので、お手洗いに立ちたい時、他のお客様に
椅子を引いて頂かないとお手洗いまで辿り着けない、そういう
不便さもまた堪らなく好きでした。
ほぼ常連さんがお客様のお店なので、お声掛けすると嫌な顔一
つせず、はいどうぞ~^^と椅子を引いてくれ通してくれました。
店内にはTVではなく、ラジオが流れていました。
新聞を広げながらお食事する方が多かった様に思います。
男性のお客様がいつ行っても8、9割というお店。
私も友人を何人かお店を閉めるまで連れて行きましたが、どの友人
にもすげー良いお店を見つけたなぁ、教えてくれてありがとうと喜
んでくれたと同時に、店じまいを惜しんでいました。
もっと早くに知りたかった、もっと通いたかったと。
店じまいをと思っているとおじちゃんの家の事情を伺った時、
仕方のないことだよね、…そうだよね、でもどうしよう、凄く寂しい
と泣いてしまった私に、お店辞めると決める日はまた後で教えるか
らね、突然辞めたりはしないよ、と慰めて下さった。
もしかしたら、おじちゃんも奥様も天に召されているのかもしれ
ない…。
私をあの店に迷いなく導いてくれたあの香りはもうなくても、
恥ずかしそうにお料理してくれ、美味しい美味しい♡と食べる私に
向けられた照れくさくも嬉しそうなおじちゃんの顔やご馳走様!と言うと
必ず奥から「ありがとうね」と顔を出してくれる奥様のことを一生
忘れません。
七つ森も大分入り浸りましたが、キッチンスターも高円寺に住んで
いた頃は入り浸っていた洋食屋さんです。
私の胃袋が大変お世話になりました。
素敵な思い出を本当にありがとうございました。